夏彩憂歌

「お前が怖い夢を見ないように、
眠れない夜を過ごさないように、
怯えて朝を迎えないように。
俺がお前を守ってやる。
目を閉じたら、俺を思い出して?」

彼女は俺の胸の中で、俺のシャツの裾をつかみながら頷いた。


「泣きたいなら泣いて。
悲しいなら悲しんでもいい。
大丈夫じゃないお前も好きだから、
すげぇ好きだから。
全部全部ひっくるめて、俺が包んで、思いきり笑わせてやる。
俺にとって世界で一番素敵なのは、お前の笑顔だから」


自分でもクサイこと言ってるって分かってた。

だけど伝えなきゃ。

5年分の想い。

もう二度と、彼女が離れていかないように。



彼女は泣いてた。

俺の胸の中で、肩を震わせて泣いてた。

だけど、多分その涙はあの日の涙とは違う。


「愛してるよ」



青くて白い月が、俺たちを包みながらふっと微笑んだような気がした。


・・・・・VOL.5 たったひとつの恋のうた[完]・・・・・