夏彩憂歌

「そうしておばあちゃんは、おじいちゃんと結婚することにしたの?」

あたしはおばあちゃんの抱えていた過去を知って、胸がいっぱいになってなぜか涙が止まらなかった。

「あら、みくちゃん、泣いたらかんよ。笑って笑って」

きっとおばあちゃんの皺は、おばあちゃんのたくさんの笑顔の勲章。

「おじいちゃんとの結婚を決めたのは30歳のときやったかね。ずいぶん遅かったんやけど、でもちゃんと慶兄さんの望みは叶えられた。おばあちゃん、ずうっと幸せやった」

目を細めて空を見上げるおばあちゃんは、誰よりも可憐な少女だ。

「でもねぇみくちゃん。慶兄さんのこと、忘れたことは片時もあらへんよ。
私の心の中で慶兄さんがずっと一緒に生きていることを理解してくれるひととしか結婚しんって決めとったん。
おじいちゃんも素敵な人よ。慶兄さんと、おじいちゃん。私はふたりを、一生かけて愛し続けるんよ」

私が小さい頃に亡くなったというおじいちゃんも、それから遠い昔おばあちゃんを愛した慶兄さんというひとも、きっとあの青空から笑顔でおばあちゃんを見守っているんだろう。

「ふたりは私の人生のゴールで一足先に待っとるんね」

太陽に向かって誇らしげに咲き誇る向日葵たちは、おばあちゃんにそっくり。