夏彩憂歌

どうしてあと2ヶ月、早く終わってくれなかったんだろう。

それだけで、救える命があったのに。

帰ってくる命があったのに。

誰を、何を憎めばいいのか分からないまま、それでも憎み続けた。

そうしなければ、私は息もできなかった。

空気みたいに思っていた、彼を失って。

息苦しくて、苦しくて、当たり前だった息の仕方さえ忘れて。

涙はどれだけ流しても枯れないんだと、このときに知った。

彼はそんな私をどんな気持ちで見てたんだろう?




慶兄さんは、空に帰っていった。




ねぇ、慶兄さん?

私はあなたがいなくなってから、どこまでも思慮深くて優しくて私を想ってくれていたことを知ったの。

まるで自分が帰ってこられないのを分かってたみたいに、あなたは私にたくさんの言葉を残してくれたね。