夏彩憂歌

「ゆうやーけこやけーのあかとーんーぼー……

おわれーてみたのーはーいつのーひーかー」

慶兄さんと、私が一番好きな歌。

彼はたくさんのことを私に教えてくれたけれど、きっと数あるそれらの中で一番記憶に鮮明に刻まれているのはこの歌だろう。

何度彼と、ああして歌ったことだろう。


今口ずさんでも、あの燃えるような空が目に浮かぶ。

彼の大きな背中と、彼の体温と。

少し低めの優しい声と、真っ直ぐな黒髪。

意志の強そうな、それでいて聡明そうな瞳。

整った顔立ち、優しい口元。

彼の全てが、私を包み、癒していた。