アリアとフェイレイはギルドの街中にあるコンドミニアムに一泊し、改めて養成学校の校内を案内をしてもらった。

 入学に必要な書類を作成し、商業通りで制服の採寸、教科書の購入、そして剣士には欠かせない剣の購入に赴いた。

 魔族を相手にする傭兵たちの武器を扱う店内には、剣の他にもナイフやダガー、槍や昆、斧、鞭、弓など、戦闘で活躍する様々なものが並んでいた。ただ、魔銃は他に専門店があるため、この武器屋には置いてない。

 物珍しそうな顔で店内を見回す息子の手を引いて、アリアはカウンターにいた恰幅のいい店主に声をかけた。

「よぉ」

「おお、『赤髪の英雄』じゃねぇか。今日はどうした、旦那の剣の手入れでも頼まれたかい?」

「いや、今日はこの子の剣を作ってもらいに来たんだ」

「この子の。……もしかして息子さんかい?」

「そうだ。フェイレイという。フェイ、剣士を目指すのならば世話になるだろうから紹介しておこう。武器屋の店主でこの国随一の鍛冶師でもあるゴートンだ」

「ゴートンさん、はじめまして、フェイレイです!」

「ほう、元気がいいな。見た目は母ちゃんそっくりだけど礼儀正しさは父ちゃん似かぁ? こっちこそよろしくなっ」

 筋肉隆々とした武器屋の店主は、厳つい顔を柔和にして微笑んだ。

「礼儀正しさも私に似ているんだっ」

「その年で入学を許可されるたぁ、随分優秀なんだなぁ。父ちゃんみたいな剣士を目指すのかい?」

 むっとして言い返すアリアの言葉に被せるようにして、ゴートンはフェイレイに訊ねた。

「うん、かっこいい剣士になって、勇者になるんだ!」

「へぇ、勇者! そりゃあいい」

 店主はガハガハ笑いながら、カウンター越しにフェイレイの頭を撫でた。フェイレイの頭を鷲掴みにするほどの大きな手に、赤い頭がぐるぐると揺さぶられている。

「あ、う、う、ゆ、勇者になれる強い剣ください!」

「はっは、そうだなぁ。お前ぇさんも父ちゃんみたいな大剣を振り回してみてぇだろうが、体が出来上がるまではちゃんと自分に合った大きさのものを選ばねぇとな。まずは……このあたりでどうだい?」

 カウンターの奥にある短剣を手に取り、フェイレイに手渡す。