それをニヤニヤしながら眺めるアリアの元に、銀髪の男性が近づいた。

「賑やかだと思ったら、お前かアリア」

「ああ、班長」

 現れたのは魔銃士のガルーダ=ファトス。任務帰りなのか、愛銃を背負ったその姿は薄汚れていた。

「ありゃお前の息子か。精霊石を壊しちまうなんてランス以来だな」

「そのようだな」

「しかし、ランス似っつーことは……召喚も出来ねぇんじゃねぇの」

「その通りだ。精霊士も魔銃士も無理だな」

「宝の持ち腐れだなぁ、あの親子は」

「そうだな」

「けど、なんで召喚出来ねぇんだろうな。術式が理解出来ない、ってのも多少あるらしいけど、あいつら精霊に好かれてるんだろ? それなら精霊の方で協力してくれそうなのにな」

「……」

 教官たちのフェイレイ争奪戦が行われているのを見ながら、アリアはランスの言葉を思い出した。



『良く見ていてくれ』


 どこか思い詰めた顔で、そう言っていたランス。

 どうして本気で戦わないのかと訊いた時も、ギルドを辞めると言った時も、彼はそんな顔をしていた。

 何が気になるのか、アリアには分からない。

 精霊石を壊すほどの魔力と、どの属性にも対応出来る素質を持ち、更には精霊たちに友として認められる人の良さを持ちながら、『召喚』することが出来ない事実──それが、ランスの気になることであることは確かなのだけれど。

「……教官方にも話を通しておくか」

「何をだ?」

「ウチの息子は暴れ馬だってな」