「グィーネ、こんにちは! ウィスカ、ティナ、ウィルダス、みんな元気っ?」

 遠くまで、声を届けるように。

 腹の底から出た大声に乗って、魔力も解放された。掌に乗った透明な精霊石がそれに反応し、急激に光を放ち始める。

「わっ?」

 あまりの眩しさにフェイレイは目を閉じる。

「こ、これはっ……七色の、光っ? ……あ、あらっ? ちょっ……」

 メイサが眼鏡に手をやり、石の状態を確認しようとすると、フェイレイの掌に乗っている石が軽い音を立てて弾け飛んだ。

「……」

「……」

 沈黙が落ちる。

 光の粒となった精霊石が頭上から降り注ぐ中、メイサも、周りにいた他の試験官たちも、目を丸くして固まっている。ただアリアだけが薄い笑みを浮かべていた。

「……割れた」

 メイサは周りにいる試験官たちに目配せをした。彼らは動揺を隠せないまま「もう一度」という結論を出した。

「割れちゃって、駄目だった?」

「いえ、割れることはまずないので、もしかしたら最初から皹が入っていたのかもしれません。もう一度やってみてくださいね~」

「はーい」

 新しい精霊石を掌に乗せ、フェイレイは改めて精霊たちに元気良く挨拶をした。

 結果は同じ。精霊石は音を立てて粉々に砕け散ってしまった。その破片は絶えず色を変えながら、目を開けるのも耐え難いほどの輝きを放っている。

 しばらく沈黙が下りる訓練場。

「……フェイレイくん」

 メイサががしっとフェイレイの手を掴んだ。

「精霊士を目指しましょう! 精霊石を壊すほどの膨大な魔力、そして全属性を得手とする類稀な素質! きっと皇都の惑星王にも匹敵する魔力です! 確かに百年に一人の逸材ですアリア副支部長! どうか息子さんを精霊士養成学校にお預けください!」

「またれよメイサ殿! フェイレイ=グリフィノー君は剣士志望であろう! あの身体能力、剣士として生まれてきたようなものだ!」

「待て待て! フェイレイくん、お母さんのような拳闘士を目指そう! 『二代目赤髪の英雄』と呼ばれる日も近いぞ!」

 やんややんやと騒ぎ立てる試験官たちに、フェイレイは目を白黒させる。