空よりも高く 海よりも深く

「リディルはフェイに依存しすぎている」

 子どもたちを寝かしつけた後で、夫婦はリビングのソファに並んで座り、話し合っていた。

「仕方ないじゃないか。あの子は初め、フェイ以外の人間に怯えていて、他に託せる者がいなかった。フェイがいるからここまでなんとか生活してこれたんだ。それを今更引き離すというのは……」

 アリアの言葉に、ランスは首を振った。

「今はそれでいいかもしれない。二人とも子どもだからね。でもだからこそ、今引き離さないといけないと思うんだ」

「何故?」

「あの子たちはまだ9歳になったばかり。何かを判断するには知らないことや経験も足りない。その一方で何かを吸収するのは恐ろしく早い。そんな時期に、リディルは『フェイがいるから大丈夫』と思って生活している。逆に言えば、『フェイがいないと生きていけない』んだ。それは普通、子どもが親に対して抱く感情で、成長とともに薄れていくものだ。だけど、リディルの場合は違う。フェイが親としてリディルに接していないからだ。フェイに親の代わりは無理だろう? ただ見守って、突き放すなんてことも無理だ。……今のままでは、悪戯に依存心を強めてしまう」

「……む」

 アリアは眉間に皺を寄せながらも、静かに頷いた。

「フェイも……さっきの言葉、聞いただろう? フェイも、リディルを護ることを生き甲斐とするだろう。リディルには自分がいないと駄目なんだと認識して、色々と世話を焼くようになる。……それはきっと、リディルのためにならない。今の状況を続けるのは……洗脳に近い」

「……そうして、互いに向き合っているうちは良いが。『洗脳』が解けたとき……フェイかリディルの想いあう力のバランスが崩れたとき、どちらかが壊れる……か」

 アリアはまた、難しい顔で呟いた。

 そんなことは本望ではない。

 かわいい息子と、大事な娘。

 二人とも健全に、逞しく、広い知識と目を持って世界を渡り歩いて欲しい。親として子に願う当たり前のことを、アリアやランスも願っているのだ。

 リディルが本当の娘になればいい。

 そう願う気持ちも事実だが、ただの操り人形として傍に置きたいわけではない。自らの意思で立って、歩いていく。そういう普通の人でなければならないのだ。