夜中、人の気配がした。

 気配は向かいの部屋から廊下へ。そして階段を下りて、そのまま外へ。

「リディル……?」

 何をしているのだろう。喉が渇いたりトイレだったりするのならば、家から出ることはないはずだが。

 起きて外に確認しに行くべきか、少しの間迷っていたが、しばらくするとリディルは自分の部屋へと戻っていったようだった。

 その日から、リディルは度々夜中に起きて外に出て行くようになった。

 心配になって何度かついていこうかと思ったのだが、家の周りには危険な気配もないし、昼間のリディルにもなんの変化もないのでしばらくはジッと見守っていた。

 しかしあまりにもそれが続くので、今日こそはリディルと話してみようと、夜中に起き出して行った彼女を追いかけようとすると。

 フェイレイの気配が彼女の元に近づいていった。

 ランスは二階の廊下の窓から、そっと外の様子を伺う。

 庭にある大きな木の下で、二人は向かい合うようにして座っていた。何やら話している声が聞こえるが、内容まではさすがに分からない。

 それでも、リディルが泣いているらしいことは分かった。そして、フェイレイが頭を撫でて、慰めていることも。

 何か不安なことがあったのだろうか。

 些細な変化を見逃してしまっていたのだろうか。



 しばらくして、二人は一緒に家の中に戻り、階段を上がってきた。

「おやすみ」

 リディルの部屋の前で、囁くようにそう言う息子の声が聞こえる。

 このまま自分たちの部屋に戻って寝るのだろうと思っていたランスだったが、ここから先に予想外の出来事が待っていた。

 リディルが何か、フェイレイに向かって話している。

 二言、三言、言葉を交わした二人は、二人ともリディルの部屋に入っていった。閉じられたドアは、朝まで開くことは無かった。

「……あれ?」