「うん、でも俺は……いいと思うんだけどな。そうすればずっと近くにいてくれるだろうし……」

 アリアの気持ちがグラリと傾き始めた。

「かわいい息子と、かわいい嫁。いいなあ」

 グラグラと、倒れそうである。

「それにフェイはリディルを託されたんだ。俺たちはフェイを立派な騎士に育て、ずっと護らせる義務が──」

「なるほど、そうだな!」

 アリアの目の色が変わった。

 何者かははっきりしないが、フェイレイは眠り姫を誰かに託されているのだ。それをずっと──一生、護らせるのが親としての務めというもの。

 甘ったれで泣き虫の馬鹿息子を皇女殿下に見合うような立派な騎士に育て上げれば。そうすればかわいい娘が娘のままでいてくれることも夢ではない。

何せ皇女殿下は追われている身。面倒事に他人を巻き込むことは皇女殿下本人も、そして惑星王も望まないだろう。下手な人物に預けることなど出来ないのだから、それならばいっそ、深い関わりを持ってしまった息子に託すのが一番の選択なのではないのか──。そんな風に思い至った。

 あのエインズワース夫妻も、息子のヴァンガードを皇女殿下の護衛官としてしっかり、厳しく育てると言っていた。彼らと一緒に皇女殿下を護っていくと決意したアリアたちも、息子を厳しく育てなければならない。

 これは使命だ。フェイレイの親としての、責任ある使命なのだ。


 こうと決めれば行動が早いのがアリアだ。

「それならば、戸籍は別にせんといかん。この国の法律では、たとえ血の繋がりがなくとも兄弟は結婚出来んからな。よし、ここはアルのところに頼んで来よう」

「うわあ、アリア、本気かい?」

「う? うむ、まあ、なんだ。念のためだ、念のため。もちろん、フェイを眠り姫の騎士として育ててねばなるまいが、恐れ多くも姫の伴侶となるようなことなどあるまい。うむ、そんな恐ろしいことがあるはずもない。万が一になど考えてはいないさ、ふふふ、しかし、念の為にな。まさかとは思うが、念のためだ」

 そう言うアリアの目は、キラキラと輝いていた。……割と本気だ。