そんな両親を尻目に、フェイレイは眠り姫に視線を戻す。
フェイレイは純粋に眠り姫に起きて欲しいのだ。
早く目を覚まして欲しい。早く瞳の色が何色なのか教えて欲しい。早く一緒におしゃべりがしたい。早く一緒に遊びに行きたい。早く、早く。
「そういえば、ひめの手にキスをしてた話もあった」
それも試してみよう、と眠り姫の手を取り、柔らかい手の甲にちゅっとキスをした。
一瞬アリアは目を吊り上げたが、手の甲へのキスは騎士の主君への『忠誠』の証。眠り姫を託されたという息子にはその資格があるのかもしれないと、それは見逃すことにする。しかし。
「……キスは駄目だと言っただろう」
一応釘は刺しておく。
「口じゃないもん……ああああああ!」
フェイレイは口を尖らせてすぐ大声を張り上げた。アリアもランスも驚いて肩を震わせる。
「起きたああああー!」
フェイレイは顔を輝かせて眠り姫の顔を覗き込んだ。ずっと閉じたままだった瞼は薄く開き、ぼうっと白い天井を見つめている。
「ひめ? ひめ?」
眠り姫の顔の前でヒラヒラと手を動かしてみる。
その間にランスはベッドサイドにある呼び出しボタンを押し、医療スタッフへ連絡を取る。そしてアリアはベッドに腰掛け、眠り姫の顔を覗き込んだ。
「姫、大丈夫ですか。私の声が聞こえますか」
アリアが声をかけるが、眠り姫はぼんやりと天井を見つめているだけで反応しない。
「ひめ」
ぺた、と両手で頬を挟みこみ、フェイレイが顔を覗き込む。
すると眠り姫はピクリと反応し、ゆっくりと瞼を開ききった。
現れた美しい翡翠色の瞳に自分の姿が映ったのを見て、フェイレイはぱあっと顔を明るくする。
「やった! ひめ、起きた! 母さん、やっぱりひめはキスで起きるんだよ! 俺の言った通りでしょー!?」
嬉しそうに叫ぶフェイレイを、眠り姫はぼんやりとした眼で見ていた。
つんつんとした赤い髪に、大きな深い青の瞳。良く動く表情に、身体の動き。そして、良く通るかわいらしい声をゆっくりと目で追う。
フェイレイは純粋に眠り姫に起きて欲しいのだ。
早く目を覚まして欲しい。早く瞳の色が何色なのか教えて欲しい。早く一緒におしゃべりがしたい。早く一緒に遊びに行きたい。早く、早く。
「そういえば、ひめの手にキスをしてた話もあった」
それも試してみよう、と眠り姫の手を取り、柔らかい手の甲にちゅっとキスをした。
一瞬アリアは目を吊り上げたが、手の甲へのキスは騎士の主君への『忠誠』の証。眠り姫を託されたという息子にはその資格があるのかもしれないと、それは見逃すことにする。しかし。
「……キスは駄目だと言っただろう」
一応釘は刺しておく。
「口じゃないもん……ああああああ!」
フェイレイは口を尖らせてすぐ大声を張り上げた。アリアもランスも驚いて肩を震わせる。
「起きたああああー!」
フェイレイは顔を輝かせて眠り姫の顔を覗き込んだ。ずっと閉じたままだった瞼は薄く開き、ぼうっと白い天井を見つめている。
「ひめ? ひめ?」
眠り姫の顔の前でヒラヒラと手を動かしてみる。
その間にランスはベッドサイドにある呼び出しボタンを押し、医療スタッフへ連絡を取る。そしてアリアはベッドに腰掛け、眠り姫の顔を覗き込んだ。
「姫、大丈夫ですか。私の声が聞こえますか」
アリアが声をかけるが、眠り姫はぼんやりと天井を見つめているだけで反応しない。
「ひめ」
ぺた、と両手で頬を挟みこみ、フェイレイが顔を覗き込む。
すると眠り姫はピクリと反応し、ゆっくりと瞼を開ききった。
現れた美しい翡翠色の瞳に自分の姿が映ったのを見て、フェイレイはぱあっと顔を明るくする。
「やった! ひめ、起きた! 母さん、やっぱりひめはキスで起きるんだよ! 俺の言った通りでしょー!?」
嬉しそうに叫ぶフェイレイを、眠り姫はぼんやりとした眼で見ていた。
つんつんとした赤い髪に、大きな深い青の瞳。良く動く表情に、身体の動き。そして、良く通るかわいらしい声をゆっくりと目で追う。


