一週間の任務を終え、他の隊と交代でギルドの街へと戻ったアリアは、真っ直ぐに病院へと向かった。

 眠り姫を預かっている都合上、ベビーシッターを頼むわけにもいかず、フェイレイのことは眠り姫の担当看護師に様子を見てくれるように頼んでいただけだった。

 自分で言い出したこととはいえ、まだ7歳の子ども。寂しい思いをさせてしまっただろうかと申し訳なく思いながら特別療養室を訪れる。

「……おや」

 眠り姫の病室には、フェイレイ以外にビアンカ、そしてオズウェルがいた。もちろん、彼らの息子のヴァンガードも一緒だ。

「母さん、おかえりー!」

 病室に足を踏み入れた途端、フェイレイが勢いよく飛びついてきた。

「ああ、ただいま」

 それを受け止めると、ビアンカとオズウェルもソファから立ち上がって頭を下げた。

「お疲れ様です、アリア隊長」

「来ていたのか。ご主人の怪我の具合はどうだ」

「おかげさまで、もう何の支障もありません。本当にお世話になりました」

 水色の長い髪を揺らしながらお辞儀をするオズウェルの動きは流麗で、とても怪我をしているようには見えない。実際はまだ腕を包帯で吊っていたが、彼の言う通り、動くのに苦はないようだ。

「そうか、それは良かった。……今日は、眠り姫のお見舞いか」

「ええ。それと、お話がありまして……」

 ビアンカは夫であるオズウェルを見上げる。オズウェルは頷き、鋭い水色の瞳をアリアへ向けた。

「『眠り姫』のことで」

「ああ」

 アリアは2人にソファに座るように促し、自分もベッドサイドに置いてあった丸椅子を引っ張ってくる。フェイレイにはヴァンガードの遊び相手をするように言いつけ、病室の隅に追いやった。

「この通り、身体も回復しましたし、眠り姫の世話は私たちが引き継ぎたいと思っているのです」

「ふむ」

「父の遺志を継いであの方をお護りするのは私たちの役目と思っています。フェイレイくんには寂しい思いをさせてしまって申し訳ありませんでした。今後は私たちがここで眠り姫の目覚めを待ちたいと思います」

「まあ……私に異存はないのだが……」

 アリアはチラリとフェイレイに視線をやる。

 面倒を見ろと言ったからか、ヴァンガードを抱っこして歩いている。しかし幼児並みの体型の息子に、2歳児の抱っこは重いらしい。顔が真っ赤になっている。ズリ落ちそうになって、ヴァンガードが必死にフェイレイの肩にしがみついていた。