「皇都……」

 眠り続ける皇女の母は、皇都で亡くなっていた。

 すると従者であるクライヴと2人でセルティアまで逃げてきたということだ。息子と同じ年の小さな少女が、最悪の形で母と別れ、どんな想いでここまで……。


 ランスは目を伏せると、パソコンの電源を落とした。そして立ち上がると、眠り姫の眠るベッドに腰掛けた。

「少しでも穏やかな夢が、見れますように……」

 そんなことしか祈ってやれない。

 けれども、せめて。

 眠りの中にいるときくらいは穏やかでいて欲しいと、優しい手つきでハニーブラウンの頭を撫でるのだった。




 その数日後、宮廷精霊士でビアンカの義父、クライヴ=モリア=エインズワースもテーゼ川の河口付近で、帰らぬ人となって発見された。皇女と同じ刀剣による刺傷が身体中のあちこちにあり、死因は刺傷による出血性ショックだろうということだった。

 義父の訃報を聞き、ビアンカ、そして夫であるオズウェルは息子を抱きながら静かに涙する。

 生きている姿で見つけてやることが出来なかったランスとアリアは、少なからず罪悪感を覚えた。




『たすけてって言ったんだ』

『たくすって言われたよ。たくすって、なにー?』



 フェイレイの言葉が、脳裏を過ぎる。