美しい面差しの金髪の女性は、思いつめたような顔で医師の後をついてきた。そうしてアリアとランスに気づくと、小さく会釈をした。アリアたちも会釈を返す。

「こちらです。あの、右から3番目のベッドに横になられている方なのですが……お探しの方でしょうか?」

 医師の声に金髪の女性はじっと集中治療室の中を見つめる。

 そうして、声を震わせた。

「あなた……!」

 腕の中の小さな男の子を抱きしめ、悲愴だった顔に花のような笑みを浮かべた。

「はい、はい、間違いありません、主人です。ああ、ありがとうございます……!」

「そうですか、良かった。今はだいぶ安定していますので、近いうちに一般の病棟に移れますよ。良かったですね」

「はい……! 本当にありがとうございます……」

 女性は涙ぐみながら、何度も医師に頭を下げる。

 この災害で離れ離れにでもなっていたのか。感動の再会にアリアとランスも顔を綻ばせる。

「あの、中に入れますか? 近くで顔を見たいのですが……」

「ええ、あの……この中は無菌室となっていますので、ご遠慮いただいているんです。申し訳ありませんが……」

「そう、ですか……では、ここでしばらく眺めていても?」

「ええ、それは構いません。どうぞ、お好きなだけご主人の傍にいらっしゃってください」

「はい、ありがとうございます」

 女性はまた頭を下げ、そうしてフェイレイの隣で心底ほっとしたような顔で夫らしき人を眺めていた。

 そのまま時間が過ぎて。

 抱かれていた男の子が飽きてきたのか、女性の腕の中で暴れ始めた。

「あー、あー!」

「これ、ヴァンガード、いけませんよ、静かにしなさい」

「やん、おりる、おりる」

「いけません。ジッとして父上をご覧なさい。こら……す、すみません」

 バタバタ暴れる息子を押さえつけ、女性はアリアとランスにペコリと頭を下げる。

「ふふ、同じところでジッとしているのは疲れるだろうな」

 アリアは暴れる男の子を微笑ましそうに見る。

「すみません、静かにさせますから……」

「大丈夫ですよ。好きにさせたらいい」

 ランスもそう言って微笑む。