星歴2032年、12月8日。

 星府軍によるセルティア国への制裁戦争は、魔族討伐専門機関・セルティア支部支部長、アリア=グリフィノーの死によって幕を閉じた。

 星府軍は日没までにセルティアから撤退。しかしその後現れた魔族の大群により、セルティア国防軍との戦闘が開始される。

 星府軍の攻撃でギルドは壊滅状態にあったが、ほぼ無傷であった国防軍の武力で何とか国家滅亡を踏みとどまる。

 この三週間後、13月2日。とうとう天変地異が世界中に襲い掛かった。

 戦争で疲弊しきったセルティア国民が魔族に蹂躙されるのも時間の問題であった。

 だがその一週間後、13月9日。

 世界は救われた。

 フェイレイ=グリフィノーによって、魔王が討たれた。

 魔王に捕えられていた惑星王を救出し、世界に安寧を齎した彼は、星中の民から『勇者』の称号を贈られた。

 この時の戦いは、星の民なら誰でも知る偉人伝として後世へと伝えられていくことになる。

 しかしそこに、フェイレイが魔王を討つに至る“礎”となった夫婦の名は、残されていない。