「ぐ……」

 もうもうと上がる黒い煙の中で、アリアはなんとか身を起こす。

「班長……マキシ……無事か……」

「げほっ……ああ、生きてるぞ、なんとか……マックスライアン、大丈夫か……?」

 操縦席に座っていたマックスライアンの姿を探して視線を彷徨わせると、彼はその椅子でぐったりと頭を垂れていた。

「マキシ、しっかりしろ、おい」

「ぐ、う……」

 頭から血を流しているマックスライアンは意識がない。ぶつかった衝撃で足もやられているようだった。

「班長、マキシを頼む」

「ああ」

 アリアは自分の体に異常がないか確認すると、斬り取られた側面から滑走路に降り立った。ゴウ、と強い風に髪が煽られる。

 兵士たちはこちらへ視線を向けてはいるが、やはり手は出してこない。代わりに、滑走路の真ん中でアレクセイが殺気を放っていた。

「私に決闘を申し込むなど、命知らずなことをなさる。貴女はそれが無謀なことだと解らないような愚者ではないと思っていましたが」

 強風に短い黒髪を靡かせながら、アレクセイは静かに声をかける。

「ふん、騎士の風上にもおけん貴様に愚かなどと言われたくはないな。降伏宣言をした者に更なる攻撃を加えるなど」

「我が君は完全なる死をお望みですので」

「……貴様、それが本当に惑星王のご意思だとでも言うつもりか」

 そこで、一瞬の間があった。アレクセイの纏っている殺気が、動揺を表すかのように揺らめく。

 アリアは眉を顰めた。──仮に魔王が皇都を支配しているのだとして、その影響がこのアレクセイには及んでいないのではないのか。それならば何故、明らかに惑星王ではない者の命令などを聞いているのか。疑問が生まれる。