「魔族討伐専門機関ギルドセルティア支部、支部長アリア=グリフィノー。星府軍元帥、アレクセイ=ラゼスタに決闘を申し入れる」

 搭乗口がゆっくりと閉まっていく。

 アリアは彼女を止めようと駆け寄ってきた傭兵たちに、力強く敬礼をした。

「お前たちを死なせはしない。そして私も死なない。私には、果たさなければならぬ約束があるからな」

 死地へと赴く彼女は、悠然と微笑んで見せた。

 傭兵たちは圧倒された。

 彼女の燃えるような赤い髪が、決して消えることのない紅蓮の炎に見えた。飽くなき闘争心は、彼ら傭兵たちにも力を与える。生きるための力を。

 彼らは敬礼を返した。

 星府軍の兵士を相手にしながら。また、飛竜を相手にしながら。自分たちの誇るべき長に向かって、敬意とともに祈りを捧げた。

 しかしそれをしなかった者が、ひとり。

 搭乗口が閉まる寸前、銀髪の男が身を滑り込ませてきた。

「班長……」

「けっ、お前の大馬鹿は今に始まったことじゃねぇが……。副官を置いていく馬鹿がどこにいるんだよ」

「しかし」

「俺はお前の副官であり、パーティメンバーだ。仲間を一人で戦わせたりしねぇよ。……ここにランスがいりゃ、最強パーティの再現が出来たんだがな」

「……そうだな」

 アリアは泣きそうになりながらも、笑みを浮かべた。

「ランスは戦っている。ここなんかよりもずっと、辛い戦いを、ひとりで、戦っているんだ……」

「そうだな」

 ガルーダは頷いた。

 彼は、ランスは病気なのだと思っている。真実は知らなくとも、生にしがみつき、死と向き合う戦いというものは辛いだろうと理解していた。