空よりも高く 海よりも深く

 王都フォルセリア方面に飛竜は向かっていない。ということは、そちらへ向かった星府軍の護衛艦はまだ無事で、フォルセリアを落とすことが出来るということだ。

 むしろそれが目的だろう。

 人族と敵対する魔王がこの戦の指揮を取っているのなら。間違いなくセルティアを滅ぼす。世界を、滅ぼす気なのだ。


「アリア! さっさと逃げろ!」

 ぐい、と腕を引っ張ってセンタービルの中へとアリアを引っ張って行こうとするガルーダ。

 けれどもアリアはその手を振り払った。

 アリアにはすべきことがあった。

「班長、お前は地下へ。私は──行かなければならない」

「あの数の飛竜相手じゃいくらお前でも死ぬぞ! いいから来い、お前を死なせたらランスに謝っても謝り切れねぇ!」

 何が何でもシェルターへ連れて行こうとするガルーダとやり合っていると、インカムに司令室から通信が入った。

『全職員に連絡。皇女殿下は無事にこの空域を離脱しました。繰り返します、皇女殿下は無事にこの空域を離脱しました!』

 オペレーターの声に、星府軍を押し留めていた傭兵たちから歓声が上がる。

 アリアも地図を広げて確認してみたが、確かに赤い点は地図上から消えていた。もうこの空域にはいない。

「リディルちゃんとフェイレイは無事だ! お前もシェルターに行くぞ!」

 ガルーダに促され、アリアは一時そちらへ足を向けそうになった。

 だがしかし。

『私はセルティア国国王、クラウス=ダート=アーヴァントロルである』

 通信機から聞こえてきたクラウス王の声に足を止めた。

『セルティアは、これ以上の戦を望まぬ。よって、降伏を宣言する。セルティアは、降伏を宣言する。惑星王への反意はないことを、我が首を以てその証とする。どうか矛をお納めいただきたい。我がセルティアの民に、神の慈悲を』

 それはアリアの通信機からではなく、司令室から聞こえてきた。恐らくティル・ジーアにいる星府軍元帥、アレクセイにも聞こえているだろう。

「クラウス王……!」