センタービルの屋上に向かう道すがら、ランスから文字による通信がはいってきた。恐らくアリアは映像通信出来ない状況にあるだろうと踏んでのことだろう。

 そこにはフェイレイたちの新しいIDを作成しているということが書かれていた。

 これで逃亡生活も少しは楽になるだろうと、アリアはひとつ憂いを失くす。

 それを読んでいる間にも、インカムからは常に仲間たちの声が飛び込んできていた。


『目標は寮舎からセンタービル2階回廊へ向かっています!』

『アホか、もう5階制圧されたわ!』

『申し訳ありません支部長、10階中央フロア、突破されましたぁ~!』

『え、もうすぐこっち? あ、うわ、あががが……がっ……』

『救護班大至急14階休憩室までええ!』

 アリアのインカムに絶え間なく怒鳴り声の報告が届く。時々、下の方から窓ガラスが割れる音や爆発音が聞こえてくる。大分被害が出ているようだが、これは星府軍の攻撃を受けているわけではない。

『ってか、アンタの息子、強すぎんだけど!!!!』

 そんな文句が大合唱で聞こえてくる。

「ふん、たかが一人に何を手間取っているんだ。魔族を相手にする傭兵が情けない!」

 そんなことを言いながら、アリアは緩む頬を抑えきれない。「当たり前だろう、私の息子だぞ」と得意満面だ。

 思わず本音が口から洩れていたようで、ブライアンから突っ込みが入る。

「支部長、捕まえないと困るのですが」

「う、うむ、そうだったな」

 センタービル屋上の飛行艇発着所のど真ん中に仁王立ちし、腕組みをしたアリアは表情を引き締める。

 そうこうしているうちに、フェイレイはやってきた。後ろにヴァンガードを引き連れたフェイレイは、アリアに気付くと足を止める。