空よりも高く 海よりも深く

 闘志を奮い立たせて会議室を出ていく面々を見送っていると、こちらへと向かってくる銀の髪の男がいた。

「班長」

 引退したガルーダが何故ここに、と思ったが、そういえば彼は前線からは引いたが、執行部へ移動になったのだった。

 その彼はいつになく厳しい面差しでアリアの肩に手を置き、耳元で囁いた。

「どこまでが本当の話だ」

 アリアはチラリとガルーダへ視線をやる。

 流石は長年共に戦ってきた戦友だな、と僅かに笑みを浮かべる。

「……リディルが皇女殿下だというのは本当だ。惑星王が彼女を保護して欲しいと願っていたことも本当だ。ただ……それは十年前の話になるが」

「今は違うのか」

「恐らく。すまん、こちらも状況をすべて把握出来ているわけではないんだ」

「そうか。リディルちゃんのことと惑星王のこと、星府軍が攻めてくるってことだけは本当なんだな」

「ああ」

「それだけあれば十分か」

 ガルーダはポン、とアリアの肩を叩いた。

「人手が足らん。俺も前線に出る許可を」

「ふん、こちらから頼みたいくらいだ。……私も出ることになるだろうからな」

「ああ、期待してるぜ、『赤髪の英雄』さんよ」

 ガルーダがくるりと背を向けたところに、いつもグリフィノー家が世話になっている飛空艇パイロット、マックスライアンがやってくる。

「支部長、あんたの息子さんの班を、ウチの息子に迎えに行かせたんだが……」

「ああ、助かる」

「そのまま皇女殿下を他国へ避難させてはどうだ? 親の俺が言うのもなんだが、ウチの息子は優秀なパイロットだ。必ず皇女をお守りする」

「……有り難い申し出、感謝する。だが、もうあと半日もしないうちに星府軍が来る計算だ。もしここに殿下がいなければ星府軍は強硬手段に出るかもしれん。それでは国民の避難が間に合わんのだ」

「じゃあ、どうするんだい」

「……皇女殿下に時間を稼いでいただく」

「って、あんた……皇女殿下を危険に晒すのか? リディルちゃんを実の娘のように可愛がってきたあんたが」

「ああ」

 アリアは迷いなく頷いた。