フェイレイがリディルを川で見つけてからの出来事を掻い摘んで話して聞かせたアリアは、ブライアンの反応を待った。

 彼は薄いレンズの向こうで瞳を鋭く輝かせている。

「……成程。では、役員と部隊長を緊急に招集し、会議を開きます。王城から戻られるまでには準備を整えておきますので、ご自分の口からご説明を」

「……そうするしかないのだろうな」

 アリアは重く溜息をついた。

「戦になるかもしれないのだからな。何も知らずには戦えまい」

「そうですね。ですから、貴女が彼らを信じさせてください」

 アリアは深海色の瞳をぱちくりさせ、ブライアンの顔を見上げた。

「すべて真実を話す必要はありません。彼らには、何故戦に赴かなければならないのか、納得出来るように説明を」

「な……しかしそれでは、騙すことになるではないか」

「支部長、貴女は、このセルティアギルドの支部長です。皆を護る義務があるのです」

 ブライアンはきっぱりと言い切った。

「惑星王から託された皇女殿下。なのに、今は皇女を亡き者にしようとしているかもしれない……。そのように余計なことを言って皆に迷いを生じさせ、混乱させ、それで犠牲者を多く出すのですか。……ここにいる者たちは腕に覚えのある者ばかり。その力を存分に発揮させ、一人でも多く生き残るようにするのが、貴女の役目なのですよ」

「っ……」

 その通りだ。

 アリアは目の覚めるような思いがした。

 自らが招いてしまった戦。皆を巻き込むかもしれないと分かっていながら、引き寄せた運命。

 支部長としても、この事態を招いた責任者としても、ここにいる者たちを全力で護らなければならないのだ。

「……分かった。ブライアン、招集を頼む」

「了解しました」

 アリアはカッと足を踏み出した。

 迷っている暇はない。

 リディルを護る。

 そう決めたことを、いかにして遂行するかを考えるのだ。それが犠牲者を少なくするための唯一の方法だ。