アリアの脳裏には、いつかの食堂で会話した、ビアンカの暗い顔が過ぎる。

 自分ごときのアドバイスでは、彼らの押しつぶされそうな重圧を軽くすることは出来なかったようだ。

 だが、期待する。

 何者かがリディルを託したように、ヴァンガードもフェイレイに託しておけば、大丈夫だという気がしたのだ。

 親の欲目だろうか。

 息子なら大丈夫だという、何故か絶対的な安心感があった。




 そうして翌日、新しくなった息子たちのパーティを初めての任務へと送り出した日のことだった。

 クラウス王から直接アリアに通信が送られてきた。

『皇家からの勅書が各国に下った。ハニーブラウンの髪に翡翠色の瞳を持つ、今年17になる娘を差し出せと』

「惑星王が皇女殿下をお探しになっているのですか」

 元宰相を処刑したことで、リディルの処遇がどうなるのかと心配していのだが、もしかしたらリディルの汚名を雪ぐためのものだったのだろうか。

 そんな期待を込めて立体映像となって浮かび上がるクラウス王の顔を見る。

『そのようだ。だがしかし、嫌な噂を耳にしてな……。皇都に魔族が蔓延っているというのだ。それが惑星王が呼び込んでいる、などという話も出ていてな。西のグルトスと南のターニアが惑星王に逆らったとして滅ぼされたという話も……』

「グルトスも、ですか」

 その情報はアリアに届いていなかった。先程ブライアンから届けられた書類とパソコンデータにさっと目を通す。

『ワイナル国からの情報だ。まだどれも確証の得られない話なのだが。お前には先に言っておいた方が良いかと思ってな。星府軍の動きがおかしい。どうにも嫌な予感がしてならぬ』

 王の言葉に、アリアは重く溜息をつきながら項垂れた。

「惑星王が……星府軍を動かしているという可能性も、あるのですか」

『確証はない。だが、あの方ほど精霊に愛され、大きな加護を受けた方もおられない。その方を捉えておくことなど何人たりとも不可能であるという声があるのだ。つまり、やはり星府軍を動かしているのは惑星王である、と』