「惑星王が魔族か、もしくは魔族と手を組んだ者により、拘束されている可能性はないだろうか」

 元宰相が処刑されたという一報を受けたアリアは、エインズワース夫妻を会議室へと呼び出し、そう訊ねた。

 だが夫妻にしたところで、その真実を知り得るはずがなかった。皇都の情報は遮断されてしまっているのだ。

 アリアはここ数年の皇都の様子と、世界各地で同時に魔族が増加していること、南の大陸にあるターニア国の滅亡、それに星府軍が関わっていることなども話し、彼らの意見を仰ぐ。

「先程、西のグルトスも消滅したと情報が入った。……これにも星府軍が関わっているようだ。おかしいのは、国が滅んだとどこにも情報が載っていないことだ。そして、何故星府軍が魔族に溢れる皇都の守護よりも、国を滅ぼすことに終始しているのかということなのだが」

「陛下の御身は神殿により厚く護られているはずだ。お傍には武人である皇后陛下もいらっしゃる。万が一などあるはずがない。しかし……」

「……星府軍を動かすには、陛下の承認が必要のはずです……ですが、陛下が国を消滅させることなど、まして、宰相を処刑するなど有り得ません。そんなことをすれば、クーデターの首謀者とされているリディル様のお命が危うくなってしまう……」

 オズウェルに続いて、ビアンカも顔色を悪くしながら言う。

「つまり、やはり……惑星王は囚われておいでで、別の者が星府軍を動かし、そして皇都に魔族を招いているわけだな」

 推測でしかない結論だが、それしか考えられなかった。

 エインズワース夫妻は皇女を護るようにとカイン本人から言われているし、それが絶対だった。

 そしてアリアたちも、フェイレイが何者かに『お前に託す』と言われている。それが誰かは未だにはっきりはしないが、それは夫妻の父のクライヴか、惑星王が遣わした精霊たちではないかと思っていた。

 惑星王カインにとって、妹姫のリディアーナは護るべき存在。

 それが変わることなどあり得ない。

 そう、信じていた。