「……ランス?」

 何かあったのかと、アリアは急いで席を立ち上がり、会議室を出る。

「どうした」

 廊下に出て人がいないのを確認してから応答すると、通信機からランスの立体映像が浮き上がった。

『アリア、班長から通信が来た』

「班長から? 確か南に行ったはずだが……何か」

『ターニア国がない』

「……ない?」

『そう、“ない”んだ。瓦礫の山と化していて、人ひとりいない。ターニアギルドに連絡を入れてもまったく応答がない』

「なんだって……?」

 そんな情報は聞いていないと、アリアは戸惑う。

「しかし、そんなことになれば世界中に伝わるだろう」

『班長が周辺の村で聞き込みをしてくれたよ。……ターニア国が消える前に、星府軍の軍艦が、空を飛んでいたそうだ』

「何だと」

 星府軍。

 その言葉が、アリアの肌を粟立たせた。

 すぐに会議室へ戻り、ブライアンを連れ出して支部長に連れて行き、密かに情報を集めさせる。

「支部長、そんな情報はどこにもありません。皇都からの情報にも出ていません。もし国が滅んだりしたのであれば……しかも星府軍が動いたのであれば、土地を下賤された惑星王が知らないなどということは有り得ませんが」

「しかし班長は実際に目で確認しているんだぞ……」

 そこでアリアは言葉を切った。

 ……待て。

 十年前、あのとき、何が起きていた。

 平和だった年と今と、何が違った。

「……ブライアン、ターニアはいい。皇都を……ユグドラシェルの状況を、調べろ」

 ブライアンは少しだけ目を見張ったが、すぐに頷いて作業に取り掛かった。

 
 アリアは思い浮かんだ自分の仮説に戦慄した。


 あの時、起きていたのは。

 “クーデター”だ。





(フェイ、リディル……!)