通信機の立体映像に映し出された銀髪の友人の顔を思い出し、ランスは自嘲の笑みを浮かべた。つい最近の出来事さえ、忘れるようになっている。

 そういえば最近、精霊の姿を見ていない。

 破壊者の血に目覚めてから、傍に寄ってくる精霊は激減した。それでも彼らはいつも、遠くの方からランスを気遣う視線をくれていた。

 けれども最近は。

 本当に、姿を見ていない……。

「……」

 ランスはゆっくりと身を起こした。

 精霊の姿を見ない。

 これはランスが恐ろしい存在となってしまったからだが、他にも原因があるのではないかと思い直した。

 パソコンを立ち上げ、ギルドの情報局にアクセスする。

 調べるのは今年に入ってからの魔族襲撃の数だ。それは広く民にも公開されている。

「……増えている」

 魔族の出没情報、ギルドの傭兵の派遣回数、被害件数、どれも僅かずつ増えている。去年のデータと照らし合わせても明らかだ。

 まさか。

 ランスの胸に、焦りがにじり寄っていく。





「報告を」

 ギルドのセンタービル内にある会議室で行われている、執行部役員会。そこでアリアは机に両肘を突き、手の甲に顎を乗せて問うた。大きな円卓の一番端に座っていた男が立ち上がる。

「はい。今年に入り、徐々に魔族目撃の報告件数が増えていましたが、先月より倍に増えました。現在のパーティ編成では要望に応えることが難しく、見直しが必要かと思われます」

 その報告にアリアは頷いた。

「間に合うように編成し直せ。それで、魔族が増えた原因は?」

「鋭意調査中です」

 アリアは溜息をついた。

 この爆発的な魔族増加の原因は何なのだろう。これではまるで、十年前のような……。

 そう考えて、アリアは顔を上げた。