空よりも高く 海よりも深く

「どんな時でも諦めず、誰にでも笑顔で手を差し伸べられるような強い人になるよ。父さんみたいな、さ」

「……父さんはそれほど強くはなかったよ」

「いや、今でもギルドには父さんの武勇伝があるんだよ。俺、仲間たちにも依頼人たちにも良く言われるんだ。ランスさんには世話になったよ、感謝してるって。父さんに憧れてるって人もたくさんいるよ。俺も子どもの頃から父さんみたいになりたいって思ってたし」

 息子にそんなことを言われ、ランスは笑みを噛み殺した。

 しかし嬉しさに反して、胸の奥にチリチリとした黒い熱が燃え上がろうとしていた。……リディルから少し離れただけで、これだ。

 それを表に出すまいと、グラスの中の冷たい液体をゴクリと呑み込んだ。けれどもそれは更なる熱を生み出した。膨れ上がる愛情に比例して、憎悪の炎が燃え上がる。

 ランスはそっと息をついた。

 長い間、“これ”と向き合ってきたが、未だに消し去ることが出来ないでいる。息子に憧憬の念を抱かれるに相応しい、強い父でありたいと思うのに──いつまで、こうしていられるだろうか。

 そんな気弱なことを思いそうになり、軽く頭を振った。

「……そう言えば、フェイはリディルの勇者になりたいんだったね」

「ん、ああ、うん」

 フェイレイは少しだけ照れたように笑い、頬を掻いた。

「今でもそう思っているのかい?」

「思ってるよ。目指すはリディル専属勇者!」

「具体的には?」

「具体的?」

「護ると言っても色々と方法があると思うんだけど。……そういえば、フェイはだいぶお金持ちのようだね。一体何に使うつもりなのかな?」

「えっ! いや、それは……いや、てか、なんで知ってんの父さん!」

「最近パソコンに嵌っているんだよ。色んな情報を盗み見るのは楽しいね」

「えっ、父さんそんなこと出来んの? すげぇ……じゃなくて、それって犯罪だよ!」

「大丈夫、フェイとリディルと母さんの情報しか見てないから」

「プライバシーの侵害だよ!」

「大丈夫、親子だから」

「大丈夫じゃない!」

「それで、何に使うの、あの大金。まだまだ貯め込むつもりのようだけれど」