空よりも高く 海よりも深く

 フェイレイはランスから、剣の心得を学んでいる。

 この剣は他者を傷つけるものではなく、他者を護るためにあるのだと。剣の腕を磨くのは、いざというときに大切な者を護る盾となるためであると。常々言い聞かせられて育った。

 フェイレイ=グリフィノーは正義を貫く、騎士のような男だ。

 そう評されるのを、アリアは誇りに思いながら聞いている。

 そして、これならば大丈夫だと、思っている。

 すべての不安を拭い切れたわけではない。けれども、誰よりも信頼する夫が、それを証明している。強い心が、何よりも勝ることを。

「……いつか、結婚したい男が出来たら。父さんと母さんに報告しに来るんだぞ」

 息子を推したい気持ちはあるが、まだ、彼らのペースに任せてみよう。アリアはそう思いながらリディルに微笑みかけた。

「……うん」

 リディルは少し、複雑そうな顔で頷いた。





 テラスに置いてあるランス手製の椅子に座った二人は、少しだけ欠けている月を見上げながら晩酌をしていた。フェイレイはまだ果実ジュースであるが。

「フェイももうすぐ17歳かぁ。あと一年したら一緒に飲めるようになるね」

 ランスは琥珀色の酒の注がれたグラスを傾けながら、隣の椅子に座る息子に微笑みかけた。

「ああ、そうだね」

 フェイレイも微笑み返し、テーブルの上に置かれたナッツに手を伸ばす。

「班長として上手くやっているかい?」

「んー、まあまあかな? 二人とも俺より年上だから、ちょっと気を遣う。あ、いい人たちだよ。強いしさ」

「人生の先輩に気を遣うのも分かるけどね。パーティの長を務めるからには、君の決断力が重要になる。戦いの最中に遠慮してはいけないよ。君の剣は誰よりも強く、誰よりも誇り高い、『護るための』剣だ。迷いがあってはいけないよ」

「うん」

 フェイレイはランスの方に顔を向け、ニッと笑った。