「『セルティアの英雄』──。人々を魔族から護り通す凄腕の精霊士としてお前の名は国内に知れ渡っている。ギルド内から、王都から、お前を所望する声がやまない」
「……そう、なの」
「ああ。同じ傭兵から王国の騎士から、貴族たちからの打診もある。選びたい放題だが、気になる相手がいるなら会ってみるか?」
リディルは桶の中に手を入れたまま、じっとアリアを見つめた。
「……私がそうしなければ、母さんが、困る?」
「いや! そんなことはない! お前が望まないものはすべて殴り捨ててやるから安心しろ!」
「殴っちゃだめだよ……」
リディルは小さく微笑む。それはどこか安心したような顔でもあった。
「私は……いいよ」
リディルは手元に視線を戻し、皿洗いを再開した。
「今のままが、いい」
それは結婚の意志はないということだろうか。それとも。今のまま、“フェイレイの傍にいたい”、ということだろうか。
アリアは、リディルには夫候補の中でも最高の条件の男性と幸せになって欲しいと思っている。身分のこともあるが、彼女はもうアリアの『娘』だから。かわいい娘には、なんの憂いも苦労もない、穏やかな暮らしをして欲しいのだ。
だというのに、肝心の息子は相変わらずほやーんとしている。破壊者の血など微塵も感じさせない阿呆さである。あれのどこが『英雄』なのだと、親としては思ってしまう。
確かに実績はあるのだ。
最近ではガルーダたちから離れ、フェイレイが班長となって4人パーティを率いている。任務依頼には『英雄』を指名してくる依頼者も多い。それは腕が確かなことだけでなく、フェイレイの人懐こい気質と笑顔が人々に安心をもたらすからであろう。
「……そう、なの」
「ああ。同じ傭兵から王国の騎士から、貴族たちからの打診もある。選びたい放題だが、気になる相手がいるなら会ってみるか?」
リディルは桶の中に手を入れたまま、じっとアリアを見つめた。
「……私がそうしなければ、母さんが、困る?」
「いや! そんなことはない! お前が望まないものはすべて殴り捨ててやるから安心しろ!」
「殴っちゃだめだよ……」
リディルは小さく微笑む。それはどこか安心したような顔でもあった。
「私は……いいよ」
リディルは手元に視線を戻し、皿洗いを再開した。
「今のままが、いい」
それは結婚の意志はないということだろうか。それとも。今のまま、“フェイレイの傍にいたい”、ということだろうか。
アリアは、リディルには夫候補の中でも最高の条件の男性と幸せになって欲しいと思っている。身分のこともあるが、彼女はもうアリアの『娘』だから。かわいい娘には、なんの憂いも苦労もない、穏やかな暮らしをして欲しいのだ。
だというのに、肝心の息子は相変わらずほやーんとしている。破壊者の血など微塵も感じさせない阿呆さである。あれのどこが『英雄』なのだと、親としては思ってしまう。
確かに実績はあるのだ。
最近ではガルーダたちから離れ、フェイレイが班長となって4人パーティを率いている。任務依頼には『英雄』を指名してくる依頼者も多い。それは腕が確かなことだけでなく、フェイレイの人懐こい気質と笑顔が人々に安心をもたらすからであろう。


