「マイアが結婚するそうだよ」

 やがて陽が暮れて、全員が食卓についたところでランスがそう報告すると、全員が驚きの声を上げた。

「えっ、マイア結婚すんの?」

「相手は……?」

「マイアってあれか、ルイスのところのか」

 三人がいっぺんに声を上げたのを見て、ランスは穏やか笑みを浮かべながら頷いた。

「そう。ルイスのところのマイア。フェイたちとは同級だったね。相手はエヴァンのところのベルナールだよ。フェイとリディルにも招待状が来ているんだけど、休みは取れるかい? 来月なんだけど」

「ベルナール!」

「ベルナール……!」

「あの熊小僧か!」

 また三人がいっぺんに声を上げたので、ランスは満足そうに頷いた。

「そう、ベルナール。昔はフェイがよくやられていたねぇ」

「貴様ランス、そんな呑気なことを言って!」

 アリアがいきり立つ。

 ベルナールとは、幼い頃よくフェイレイを虐めていた少年のことだ。名前の通り熊のように体の大きいガキ大将で、小さなフェイレイは恰好の餌食だったのだろう。

 いつだったかベルナールはリディルを殴ったこともあり──それはリディルがフェイレイを庇ったせいだったが──、アリアは鬼の形相で親の元へ怒鳴り込んだことがあった。

「マイアめ、大人しいから手籠めにされたのではないのか!」

「違う違う、最近のベルナールは本当に良い青年になったよ。マイアのおかげだって彼の両親も喜んでいてね」

「へぇ、そうだったんだ。じゃあ良かったね」

「良かったねじゃない!」

 呑気に祝福ムードを醸し出すフェイレイに、アリアはどん、とテーブルを叩く。

「お前悔しくないのか、同じ年の、しかも虐められてたヤツに先を越されて!」

「んー、別に?」

 フェイレイとしては昔のことだし、今は魔族討伐に忙しいし、昔馴染みの子たちがしあわせになるのならば、祝福しない理由はない。