「そうだよ。なかなかいい出来だろう?」

「すげぇ、本物みたいだ」

 船首部分についているプロペラをくるくると回せば、部屋の中をゆっくりとした速度で飛び始める。

 それを見上げるフェイレイと、そしてリディル。

 大きくなったな、とランスは目を細める。

 もう16歳。今月中にフェイレイは17歳だ。そろそろ大人と同じ責任がついてくる年頃で、自分の家庭を持つことを考え始める時期。

「……大きくなったなぁ」

 思ったことをするりと口から零すと、フェイレイの方が勢いよく振り返った。

「だろ! 大きくなっただろ! 俺やっとリディルを抜かしたんだ!」

 フェイレイは大喜びで、なっ、とリディルを見る。

 確かに、今までずっとリディルの方が大きかったが、今はもうフェイレイの方が高くなったようだ。

「これからもっと伸びるよ」

「だよな! 父さんくらいになるよな!」

 目を輝かせるフェイレイ。

 ランスは頭一つ分以上低い身長の息子を笑顔で見下ろした。

「……それはどうかな?」

「ええ、ヒドイ!」

 ガーン、と頭の上に岩でも乗せているかのようにショックを受ける息子。それを笑いながら見ていると、玄関からアリアが入ってきた。

「ったく、煩いなお前は。家の外まで声が丸聞こえだぞ」

 ギルドからここまで乗せてきてくれた飛行艇パイロット、マックスライアンに挨拶をしてきたのか、少し遅れてやってきた妻をランスは抱擁で迎える。

「お帰りアリア」

「ああ、ただいま」

 アリアも抱擁を返す。それはしばらく続いた。

 ランスは破壊の衝動のない今のうちに、彼女の温もりを感じていたかった。憎しみに捕らわれることなく、穏やかな自分のままで。彼女を抱きしめたいのだ。

 そしてアリアも、分けの分からないものと昼夜戦い続ける夫を労い、変わらぬ姿に安堵していた。それでも少し痩せた気がすると、抱擁の手を強める。

「……相変わらずラブラブだなぁ」

 息子のそんな声と、無表情ながらも穏やかな視線を寄越す娘の気配がした。