「な、なんだろうな、この説得力……」

「うん、凄いね」

 科学的根拠はまったくないというのに、ケーラの言葉は何故だか納得させられてしまう迫力があった。

 アリアとランスは更に困る。

 そこに、ニクスが薪を運ぶための背負子を見つけて背負ってきた。

「ランス、もうばあさんの戯言に付き合ってる暇はねえ! こいつに縛りつけてくれ、俺が背負っていく!」

「了解」

 ランスは丸々と太っているケーラを、まるで子どもを抱っこするかのように軽々と持ち上げ、ニクスの背負う背負子に座らせた。そうしてアリアが素早く安全ベルト変わりに長い布でぐるぐると縛り上げ、コートをばさりとかけてやった。

「こらっ、ワシはここで死ぬと言うておるじゃろうが! ワシの信じる皇帝陛下、そしてじいさんのいる星へ還るのだっ、邪魔をするな!」

「うるせえなババア! 黙れよ! 俺はてめぇにガキんときから世話になってんだよ! 見捨てていけるかってんだコンチクショウ!」

「なんという口の聞き方をする! 誰だお前を育てたバカ親は!」

「てめぇだろクソババア!」

 激しい口論をする2人に、アリアはランスへ問いかけるような視線を送る。

「ああ、うん。彼は小さい頃に両親を亡くして、ケーラばあさんに色々世話になってるんだよ」

「なるほど、そういうことか」

 納得して笑みを浮かべたアリアは玄関ドアを開ける。暴風に飛ばされるフードをかぶり直し、振り返った。

「行くぞ、モタモタしていると流されてしまう」

 もうこの家の庭はヒタヒタに水を被っていた。すぐにもっと強い流れが押し寄せてくるだろう。

「了解」

「おう!」

「待て、ワシは行くとは言っとらん──!」

 ケーラの怒鳴り声すら、激しい暴風雨の中に掻き消えてしまう。

 ともすれば方向すら見失いそうな嵐の中、4人はグリフィノー家へ向けて歩き出した。