追われる身。護らなければならない皇女殿下。魔力の少ない、力のない息子。色々と悩むことがあるのだろう。アリアも彼女たちとそう状況は変わらない。

 ランスとフェイレイのこと。リディルのこと。そして、それに悩み眠れない自分の顔は、きっと酷いことになっている。

 これを見たら、子どもたちはどう思うだろう。

 少なくともアリアはビアンカの思い詰めた顔を見て心が痛んだ。心配になった。

「……私らしくない」

 残ったパスタを掻き込み、勢いよく立ち上がる。

 トレイをカウンターへ戻してから、大股でエレベーターに乗り込み、最上階の支部長室に戻る。

「ブライアン!」

 戻るなり専属秘書の名前を呼んだアリアは、執務机ではなく、隣にある休憩室へと入った。

「私は寝る! ランスから連絡が来たら異常なしだと伝えておけ! 緊急の仕事以外は起こすなよ!」

 そう言って、ベッドに入って三秒で眠りにつく。

 後ろ向きに悩んでいる暇があったら、努力をするべきだ。

 今までと変わりなく過ごし、今までと変わらぬ笑顔で子どもたちと接し、ランスとともに彼らを見守る。

 そのためには倒れてなどいられない。

 眠れ。

 英気を養え。

 明日の家族のために。