「ランス、おい、どうした!」
目の前が暗い。
灰色だ。
夕日に彩られていた空が、街が、畑が。すべてがモノクロに染まる。
急に何が起きた。
分からない。
分からない。
頬を冷や汗が伝っていく。
ふと、背後から気配がした。
ランスはゆっくりと振り返る。
カラカラと音がするのは古い映写機の音。細く長く聞こえてくる砂嵐のような音。色を失った世界は白いスクリーンの中に閉じ込められた。
そのスクリーンの前で背後を振り返ったランスは、その存在を“認識”する。
自分と同じ、緩やかにうねる金色の髪に、空色の瞳をした青年。
白い甲冑に身を包んだ彼は、笑う。
ランスと同じ顔で、歪に、笑う。
「ランス!」
叫ぶニクスの声を無視して、ランスは家に向かって走った。
良く分からない幻影を振り払い、無我夢中で走った。
丘の上へと続く曲がりくねった小道を全速で駆け抜け、古ぼけた二階建ての自宅の扉を壊しそうな勢いで開け放つ。
そうしてリビングに置いていた、ギルドから支給されたパソコンを立ち上げた。
「アリア……アリア!」
通信が繋がるまでの時間ももどかしく、ランスは妻の名を呼ぶ。
やがて宙に浮かんだ緑色の画面の中に、仕事モードで表情の引き締まった凛々しい妻の顔が現れた。
『どうしたランス、仕事中に……』
「子どもたちは! 子どもたちは無事か!」
酷く慌てた様子のランスに、アリアは画面の向こうで一瞬言葉を失った。
目の前が暗い。
灰色だ。
夕日に彩られていた空が、街が、畑が。すべてがモノクロに染まる。
急に何が起きた。
分からない。
分からない。
頬を冷や汗が伝っていく。
ふと、背後から気配がした。
ランスはゆっくりと振り返る。
カラカラと音がするのは古い映写機の音。細く長く聞こえてくる砂嵐のような音。色を失った世界は白いスクリーンの中に閉じ込められた。
そのスクリーンの前で背後を振り返ったランスは、その存在を“認識”する。
自分と同じ、緩やかにうねる金色の髪に、空色の瞳をした青年。
白い甲冑に身を包んだ彼は、笑う。
ランスと同じ顔で、歪に、笑う。
「ランス!」
叫ぶニクスの声を無視して、ランスは家に向かって走った。
良く分からない幻影を振り払い、無我夢中で走った。
丘の上へと続く曲がりくねった小道を全速で駆け抜け、古ぼけた二階建ての自宅の扉を壊しそうな勢いで開け放つ。
そうしてリビングに置いていた、ギルドから支給されたパソコンを立ち上げた。
「アリア……アリア!」
通信が繋がるまでの時間ももどかしく、ランスは妻の名を呼ぶ。
やがて宙に浮かんだ緑色の画面の中に、仕事モードで表情の引き締まった凛々しい妻の顔が現れた。
『どうしたランス、仕事中に……』
「子どもたちは! 子どもたちは無事か!」
酷く慌てた様子のランスに、アリアは画面の向こうで一瞬言葉を失った。