空よりも高く 海よりも深く

 気を取り直して、アリアはリディルへ視線を向ける。

「リディルも半年後には昇格試験を受けることになる。今の成績だと問題はないが、気を抜くんじゃないぞ」

 アリアの言葉に、リディルは「うん」と素直に頷いた。次の試験で合格すれば、リディルは入学から候補生昇格までの最短記録を樹立することになる。魔力量も、精霊召喚術の正確さ、速さも他の追随を許さない。

 優秀だ。

 さすがは皇家の、精霊に愛された姫だ。

 12歳になったリディルは顔つきがぐっと大人っぽくなった。身長も伸びてスラリと手足が長くなり、美しくなった。

 そんな彼女のお団子頭には、ブーケと同じラセリアの花が差してあった。今朝ギルドの寮から出たところでフェイレイに差してもらったのだそうだ。控えめな彼女に白い花は良く似合っている。

「やっぱりかわいいな、似合ってる」

 差した本人も、満足そうにリディルを眺めている。

「……ありがとう」

 リディルは翡翠色の目を伏せて表情を隠した。だがほんのりと白い頬が染まっているから、褒められて嬉しいのだということが分かる。

 微笑ましいやり取りをする二人を、親たちは難しい顔で見下ろす。

 どこからどう見てもカップルだ。

 好き合う者同士のやり取りだ。なのに。

 この二人、まったく進展がないとはどういうことなのだろう。

 このくらいの年になると、結婚の約束をする者も出始める。リディルの成長は著しく、血の影響もあるのか、市井で育っているのに高貴さが滲み出てきていて、それが美しさに拍車をかけている。ボヤボヤしていると横から掻っ攫われるぞ、とヤキモキするのだが。

「……鈍感で阿呆な息子を持つと苦労するな」

「はは……」

 そんなことを言っている間に、ブーケを捧げる祭壇が近づいてきた。