リディルは元々人付き合いが得意ではない。妬みの対象にされていることはもちろん、最初の洗礼──無駄にプライドの高いお貴族様からのご忠告という名の嫌味──のおかげで心を閉ざしてしまったのかもしれない。

 なんとかしてやりたくとも、支部長であるアリアとの関係すら妬みの対象であるのだから、こちらが下手に手を出すことは出来ない。

「頑張れリディル、母さんはいつもお前を見守っているからなぁ……」

 くっ、と涙を堪えているところに、ブライアンは続ける。

「それから、同年代の男子生徒たちから……」

「なにっ、不埒なことでもされたのか!? ちょっとぶち殺してくる、待ってろリディル!」

「はいはい、勘違いですから落ち着いてください」

 ブライアンは無感情に両手を突き出し、暴れそうになるアリアを椅子に押し止める。

「リディルに何かあったらこの世界の住人すべてを殺すぞ」

「はいはい、親馬鹿を拗らせ過ぎた危険思考はお止めください。リディルさんに被害はありませんから」

「……では、何があったのだ」

「リディルさんを慕う男子生徒が急増しているのです」

 その報告に、アリアはガターンと椅子をひっくり返して立ち上がった。

「その野郎どもぶち殺」

「はいはい、どうどう、落ち着いて、はいはい」

 茶請けとして机の上に置いておいたクッキーをアリアの口に突っ込み、黙らせるブライアン。大量に詰め込まれてしばらく咽ていたら、少し落ち着いてきた。

「何故そんなことになった。リディルは疎まれているのではなかったのか」

 突っ込まれたクッキーをお茶で流しつつ、訊ねる。

「先日の演習で、リディルさんは全属性の精霊を召喚して見せたそうです。それで更に妬む者が増えたのは事実なのですが……その姿がとても美しかったそうで」

「ふっ、そうだろうな」

 何故か得意げなアリア。