魔族討伐専門機関ギルド・セルティア支部の支部長アリア=グリフィノーは、重度の親馬鹿として知られている。
周囲にそんな風に認識させているのは、偏に娘(戸籍上は姪)として迎え入れたリディルの正体を隠し、危険がないように見守っているからだ。
親馬鹿だと思わせておけば、毎日サングラスにロングコート、マスクを装着してこっそり後をつけていても、授業参観と称して勉強する愛らしい姿をじっくり拝観していても、食堂で好きなデザートを口に入れて、いつもは無表情なその顔に柔らかな笑みを浮かべ、白い頬を薔薇色に染めている姿を見てハァハァしていたりしても、親馬鹿だからなぁ、とスルーしてもらえる。
多少変態ちっくになってはいるが、そこは大切な御身を護るための演技なのだから仕方ない。
誰がなんと言おうと、演技なのだから仕方がない。
しかしついに、アリアの奇行にリディルが気づいてしまい、
「私は大丈夫だから、母さんはお仕事がんばってね」
こてり、と首を傾げながら、愛らしい声でそう懇願されればアリアとて娘の観察──げふんげふん、警護を控えなければならない。
そういうわけで、ちょっとストーカー入っちゃうくらいに子どもたちを溺愛しているように見せかけているアリアは、大好きな娘と、ちょっと心配な馬鹿息子の様子を専属秘書見張らせ、逐一報告させることにした。
「今日も異常はなかったか」
「はい」
背の高い銀髪の秘書、ブライアンは書類を手に頷いた。
「お二人とも午前中は義務教育を受けられ、午後からは実地訓練となっております。懸念事項は、リディルさんが相変わらずお一人で、お友達がいらっしゃらないことでしょうか」
「うーむ……リディルの才能にやっかむ者が多いのは事実だが、それ以上にあの子が他と関わろうとしないからなぁ……」
アリアは難しい顔で唸る。
周囲にそんな風に認識させているのは、偏に娘(戸籍上は姪)として迎え入れたリディルの正体を隠し、危険がないように見守っているからだ。
親馬鹿だと思わせておけば、毎日サングラスにロングコート、マスクを装着してこっそり後をつけていても、授業参観と称して勉強する愛らしい姿をじっくり拝観していても、食堂で好きなデザートを口に入れて、いつもは無表情なその顔に柔らかな笑みを浮かべ、白い頬を薔薇色に染めている姿を見てハァハァしていたりしても、親馬鹿だからなぁ、とスルーしてもらえる。
多少変態ちっくになってはいるが、そこは大切な御身を護るための演技なのだから仕方ない。
誰がなんと言おうと、演技なのだから仕方がない。
しかしついに、アリアの奇行にリディルが気づいてしまい、
「私は大丈夫だから、母さんはお仕事がんばってね」
こてり、と首を傾げながら、愛らしい声でそう懇願されればアリアとて娘の観察──げふんげふん、警護を控えなければならない。
そういうわけで、ちょっとストーカー入っちゃうくらいに子どもたちを溺愛しているように見せかけているアリアは、大好きな娘と、ちょっと心配な馬鹿息子の様子を専属秘書見張らせ、逐一報告させることにした。
「今日も異常はなかったか」
「はい」
背の高い銀髪の秘書、ブライアンは書類を手に頷いた。
「お二人とも午前中は義務教育を受けられ、午後からは実地訓練となっております。懸念事項は、リディルさんが相変わらずお一人で、お友達がいらっしゃらないことでしょうか」
「うーむ……リディルの才能にやっかむ者が多いのは事実だが、それ以上にあの子が他と関わろうとしないからなぁ……」
アリアは難しい顔で唸る。