「……支部長。リディル様の意志を尊重されてはいかがかな」

「なんと!?」

「確かにギルドで傭兵として働くのは危険でしょう。だが、リディル様は精霊の加護を強く受けたお方。その力を身につけることで、ご自身の身を護ることにも繋がるのではないかと」

「む……そういう考え方もあるか」

「ええ。惑星王も幼い頃は随分と厳しく召喚術を教えられていましたよ。ですからリディル様も。……いざと言うときのために、鍛えておかれた方が良いもかもしれません」

 オズウェルの言うことも尤もだ。

 このままずっと平和に過ごせるとは限らない。いざというときのために戦う術を持たせることは、リディルのためにもなるということだ。

 それに、精霊召喚術を身に着けることは、皇族にとって義務のようなもの。たとえその名を捨てても、流れる血を変えることは出来ない。

「成程。感謝するオズウェル殿。甘やかしてばかりでは子のためにならんと教えてもらった」

「いえ……。たとえ我が子とて、甘やかすわけにはいかないのですよ。厳しく教えなければ……いつ、この身が滅ぶとも限りません。一人でも生きていける強さを身に付けさせなければならないのです」

 真っ直ぐ前を見据える鋭い水色の瞳は、目の前の景色ではない、どこか遠くを見ていた。同じ色を持つ息子を想っているのかもしれない。

 皇家に歯向かう反逆者。

 その汚名を着せられた者たちの、強い決意を見た気がした。





 その後、幾度かまた家族会議が開かれて、やはりリディルの意志は変わらないことが分かった。

 ならば、頑張らせてみよう。

 最後まで反対していたアリアが賛成したことで、リディルの精霊士への道は拓かれたのだった。