「私は反対だ! どんな危険な目に遭うかも分からないのだぞ? こんなかわいい子がっ……」

「母さん……」

 リディルに潤んだ目で見つめられてたじろぐアリア。しかし腹に力を入れて目一杯否定した。

「駄目だったら駄目だ!!」






 その数日後、ギルドの街中を歩いていたら後ろから呼び止められた。

「アリア支部長」

 その声に振り返ると、水色の長い髪の美丈夫が微笑みながら歩いてくるところだった。

「オズウェル殿」

 久々に顔を見る彼は、オズウェル=ハント=エインズワースであった。今も陰ながらリディルを見守っているオズウェルは、その身を隠す意味もあり、このセルティアギルドで妻のビアンカとともに精霊士として活躍していた。

「お久しぶりだ。ご子息は息災か」

「ええ、おかげさまで元気にしていますよ。ただ……リディル様をお護りするために鍛えているのですが、なかなか魔力が上がらず、精霊士としては芽が出ないかもしれません。情けないことだが……」

 オズウェルもビアンカも優秀な精霊士のようだ。だがその息子のヴァンガードは彼らほどの魔力を示せないらしい。

「精霊士か……」

 アリアも娘──リディルの顔を思い浮かべる。

「何かありましたか? リディル様はお元気なのでしょう?」

「元気だ。元気すぎて困っている。……精霊士になりたいと言い出してな」

 アリアはここ数ヶ月のリディルの様子をオズウェルに報告した。本当は逐一報告すべきなのだろうが、手紙などの文書や通信機による会話は誰かに見られる可能性もあるし、エインズワースとの関係を知られるのも拙いので、偶然に会ったときくらいしかリディルの様子を報告出来なかった。

 話を聞いたオズウェルは、顎に手をやり少しの間思案していた。