「うん……父さん、おいしいご飯の作り方、教えて」

「いいよ。そろそろ竈の使い方も教えようと思っていたからね。リディルの料理の腕が上がれば父さんも楽が出来ていいなあ」

 そう言えば、はっとしたように目を見開くリディル。

「……! うん、父さんに楽させる。母さんにも、元気の出るご飯、あげる」

「それはいいね、母さんも喜ぶよ」

 自分に出来ることを見つけた。自分が頑張ることで誰かが救われるかもしれないと気づいた。それはただ泣いて待っているだけの毎日よりもずっと、実りある日々だ。

 リディルの翡翠色の瞳に光が灯り、輝きを増していく。

 視線を野菜に戻し、再び野菜を切り始めるその手には、力が込められていた。

「フェイががんばるなら、私もがんばる」

 小さな小さなその呟きを、ランスは聞き逃さなかった。そうして今度こそ、綺麗に洗った手でハニーブラウンの頭を撫でてやるのだった。