アストラ村に着く頃にはすでに日は落ちていて、夕食の時間を越えてしまっていた。

 それでもリディルとランスは夕飯を食べることなく待っていて、フェイレイが家に飛び込むとリディルが突進する勢いで抱きついてきた。

「フェイ!」

「わっ、ただいまリディル、元気にしてた?」

「うん……元気。フェイは?」

「俺も元気だよ! あっ、テスト、満点は取れなかったけど、ちゃんと合格出来たよ!」

「そう、なの……」

 リディルは眉尻を下げ、目に見えて落ち込んでいた。フェイレイの合格は喜ばしいことだが、これで離れ離れになることが決定してしまったからだ。

 けれどもリディルはアリアの言葉を思い出す。彼の足枷になってはいけない。彼の進む道を邪魔してはならない。
 
 寂しくとも、強くならなければならない。

「……おめでとう」

 ぎゅっと目を閉じて涙を堪え、リディルはフェイレイにしがみ付いた。リディルの葛藤に気づいているのかいないのか、フェイレイは礼を言いながら彼女の頭を優しく撫で、大丈夫、大丈夫と呪文のように繰り返していた。


 フェイレイに続いて家の中に入ってきたアリアは、玄関先で抱き合う子どもたちに「昨日くっつき過ぎるなと言ったばかりなのに」と文句を言いながらも、出迎えてくれたランスと抱擁を交わした。

「お帰りアリア。お疲れ様」

「ああ、ただいま。一応合格だ。二週間後には剣士養成学校に入学になる。寮に入るのは前日になるかな」

「そうか。……寂しくなるね」

 ランスは苦笑し、まだ抱き合っている子どもたちを見た。

「まあ、週末には帰すようにする。飛空艇の手配もしてきたからな。……リディルは大丈夫だったか?」

「大丈夫……ではなかったと思う。頑張って気丈に振舞ってはいたけど、つつくとすぐに泣きそうでね。よく頑張って我慢したよ」