「──だから、俺は今の関係止めないから。……ねえ、ちゃんと聞いてる?」
「っ、ごめんなさい!」
グルグルと考えていた私に北原君の言葉は入ってきてなくて、さらに低くなる声に私は大きな声で謝った。
しん、と静まり返る教室。
遠くから部活動中だと思う人の声が聞こえてきて、この場所だけ切り離されているような気がしてくる。
「──なつ」
「え……」
北原君の口から放たれた私の名前。
聞き間違いかと思っていたら両肩をつかまれ、下げていた頭を上げさせられた。
「これからは俺が守るから。離れるなんて言わないで」
「北原君……わっ」
両肩をつかんだまま引っ張られて北原君と距離がもっと近くなる。
あっという間に距離がなくなって、ギュッと強く腕がまわされた。
「友達からでいいから俺のこと考えてよ」
「えっ!? で、でもほら私なんて北原君に似合わないし!」
私は顔を熱くしながら体を動かして北原君の腕の中から何とか抜け出して言う。
北原君は眉を寄せて不機嫌そうな顔。
「似合うとか似合わないとか関係ない。なつの笑顔を見かけた時から俺はなつがいいの」
「でも私は友達だと思ってて──」
ふっと目の前に影ができて鼻先ほどに迫る北原君の顔。
頭の中がぐちゃぐちゃで目を閉じたらおでこに柔らかい感触がして……。
「──うん。だから今から俺のことを彼氏候補として見てよ、ね?」
目前から少し離れた距離で、北原君があまりにも優しそうな綺麗な笑顔を浮かべるから。
私はポカンと気が抜けたまま小さく頷いてしまって。
「一緒に帰ろう」と手を引かれながら、美姫にどう報告しようか一晩中頭を悩ませてしまうのだった。

