私は愛児に抱きついたままで答えた。

「ダメ」

愛児の体が僅かに動いた。

「そっか」

それからゆっくり私から離れると、愛児は鍵を開けた。

「じゃあな、乃愛」

愛児は顔を背けるようにして出ていってしまったから、私は彼の気持ちが更に分からなかった。

ただ、愛児のキスも、抱き締めてきた身体も、じゃあなと言った柔らかで優しい声も、素敵だった。

……酔ってるからだ、多分。

アイツも多分、酔ってる。

それか、仕事のストレスとかで、ダサい女を虐めたかったのか。

とにかく私達二人とも、まともじゃなかったんだ。