私にとって

彼は

樹は大事な彼だった

―――誰よりも




幼い頃泣き虫だった私は

よく男子にからかわれては泣いていた

泣き虫だって言われても

弱虫だって言われても

何も言い返せなかった




「…おいっ!
何しているんだよ!」




初めて守ってくれたのが樹だった

その声も姿も

私は今でも覚えている




「ありがとう」と言いながら

私はなかなか泣き止めなかった

嬉しかったから

初めて助けてもらえて

お伽噺の王子様に憧れていた私は

彼を勝手に王子様だと信じてしまった




彼―――樹にとっては迷惑な話だったのかもしれない

それからは樹と沢山話して遊んだけど

中学・高校へと進学するにつれて

話さない方が珍しかったのに

話す方が珍しくなってしまった