「斗真くんっ!」


「ひゃいっ!?」




素っ頓狂な声を出して振り向くと

松永(まつなが)先生が立っていた

僕は読みかけの本に栞を挟んだ





「随分読書に夢中になっていたねぇ」


「だってこれ
來真兄ちゃんの新作だからね」


「今度はミステリーかい?」


「うん
その名も『古城ホテルで起きたミステリー』!」


「…そのままだね題名」




僕はこの間來真兄ちゃんが持ってきてくれた

白羽来真(くるま)の新作を

病院のロビーで読んでいた

夢中になりすぎて気が付かなかったかな

松永先生に





「じゃあ車準備してくるからね
斗真くんはそこで大人しく待ってて

何かあったらすぐに誰かに言ってね」


「わかった」






松永先生は僕を家まで送ってくれると言う

この後用事がないからって優しいなぁ

僕はその後姿を眺めていた