男子は俺の言葉に驚いて

行ってしまった

…今思えば情けない話だ






「大丈夫?」


「ありがとうっ……」




ありがとうと言いながらも

彼女はなかなか泣き止まなかった

結局その姿を先生に見られ

俺がいじめたと勘違いされて怒られた




「どうして樹(いつき)くんが
いじめちゃったのかな?

萌ちゃんのどこが気に入らなかったの?」




そう先生に言われても

俺は何も言わなかった

だって俺がいじめたんじゃない

俺がいじめたんじゃ―――





「先生っ!
違うよ!

私を泣かせたのはこの子じゃない
この子は私を守ってくれたんだもん!

この子は私の王子様だよっ!」





男子にからかわれても何も言わなかった彼女が

この時は先生に本当のことを言ってくれた





「そうだったんだ
ごめんね樹くん」


「ううん
わかってくれたんなら良いよ」