1回溜息をついたオレは
水を飲みに部屋を出た
1階にあるオレの部屋から同じく1階にあるリビング兼台所に行くには
廊下を通らなくてはならないのだけど
廊下には床から天井にまで届きそうなほど大きな
カーテンのない窓が並んでいる
カーテンをつけなかったのは母さんのこだわりだったのだと
前に父さんから聞いた
カーテンをつけないのは珍しい――てか可笑しいと思うけど
部屋を出てからのこの景色を見ればつけなかったのに納得がいく
リビングに続く扉まで続く窓
そこから差し込むのは淡い月の光
月が綺麗な夜は電気を点けなくても廊下が明るい
この景色を初めて見た時は感動したのを今でも覚えている
この窓はカーテンをつけない方が正しいと思う
「……ん?」
窓から見える満月を眺めながら歩いていると
目の前に小さな影があった
「…斗真?」
オレは静かな廊下を小走りで影の元へ向かった


