僕は床についていた手を握った
隣の真琴が心配そうにボクの名前を呼ぶ
「…真琴のお父さん」
「おじさんで構わないよ」
「では…おじさん」
「何だね?」
ボクは俯いた顔を上げた
おじさんとおばさん――倣って呼ばせてもらう――が息を飲んだ
「真琴が長くないこと…ボクは知っています
確かにすぐ死んでしまうのは悲しいです
一緒になるのなら出来る限り長生きしてほしい
そう思うのはわかります
でもボクは…真琴と一緒になりたいです
他の人より生きる時間が短いからこそ
ボクは真琴を幸せにしたい
真琴が生きていて良かった…生まれてきて良かったと心から思って
幸せなまま天国に行けるようなそんな家庭を作りたいのです
短い間かもしれません
ですがボクは…真琴と短い時間を一緒に過ごしたい」
現代医療じゃ真琴は救えない
死ぬのは避けられない
…わかっているからこそ真琴と一緒になりたい
「真琴が死んだら…
いくら死別とは言えキミはバツイチになるぞ?」
「真琴と一緒になれるのなら…
バツイチなんて気にしません
真琴が幸せなら良いのです
真琴の幸せはボクの幸せですから…」


