俺にとって

アイツは

萌(もえ)は大事な奴だった

―――誰よりも





俺が萌と出会ったのは

物心ついて間もない頃



父親の仕事の都合で

俺は産まれた街から引っ越してきた

そこで初めて入ることになった幼稚園



母親が園長と話している間

俺は職員室を出て幼稚園内を歩き回っていた






「泣き虫ー」


「泣き虫ー」




聞こえたのは

数人の男子と

男子に囲まれた女子の姿

男子は女子をからかい

女子は言い返さずに泣いていた





「…おいっ!
何しているんだよ!」





『女の子がいじめられていたら
守らないといけないよ』

そう父親から教えてもらっていた俺は

その言葉通りに女子を守った