「いただきます……」
小さく手を合わせて食べ始める昌
その様子を見ながらアタシは尋ねた
「…おじさんとおばさんは?」
「……仕事だって」
ゆっくりだけど食べ進める昌が無表情で答える
アタシはその答えに溜息をついた
「…お父さんとお母さんは悪くないよ
オレが行ってって頼んだんだから」
黒髪に虚ろな瞳に心配そうな表情をいつも浮かべる昌だけど
一人称は僕ではなくオレなのだ
最初昌の一人称を聞く人は大体驚く人が多い
アタシは慣れていることだけど
「どうして行ってなんて頼むのよ
朝から体調悪かったんでしょ?」
「…見たくない」
「え?」
「朝っぱらから嫌なんだ
お父さんとお母さんが喧嘩するの
仕事忙しくて休めないってこと
オレも知っているからさ…
喧嘩するの見るのなら
行ってもらった方がオレは良い」


