「まったく……。
はい、じゃあ入って入って~」
はぁ、とため息をついたあと、香代先輩が言いながら手招きをした。
……なんとも立派な木造の一軒家の前で。
「え…まさか?」
「うん?
ここが別荘だよ~?」
海から徒歩1分。
と言うか、道路1本挟んだだけでほぼ隣接している。
………良物件すぎる…!
この土地いくらするんだろう…なんて考えただけで恐ろしくなる。
それが別荘とは。
恐るべし、香代先輩。
「部屋いっぱいあるし、一人一部屋ちゃんとあるから心配しないで~」
驚きすぎて黙りこんだ私を見てなにやら違うように解釈したらしい香代先輩が、ぽんと私の肩を叩いた。
私の視界の端で、いずみさんが少し吹き出したのが見えた。
「いや、別に心配してる訳じゃねぇだろどう見ても。
初めまして、ヒツジちゃん…あぁ、ツツジちゃんって呼んだ方が良かったか?
まあとにかく、こいつ金銭感覚が大幅にズレてるから。
気にしない方向で進めろよ」
「…………確かにそうみたいですね……。
そうします」
いずみさんの言葉に納得すると、いずみさんは何かを考えるように私を見て止まった。
そして、ふっと笑う。
「…………なんだ。
案外普通にしゃべれんじゃん。
極度の男性嫌いって聞いてたけど、そうでもなくなった?
あ、もしかして晶の仕業?」
「仕業ってなんだ仕業って。
せめておかげって言えよセンパイ」
明らかにムッとした様子の晶が言葉を返す。
「晶は相変わらず態度悪いなぁ。
俺、年上だけど?」
「だから?
なんかセンパイっていつまでも年上に思えないんすよねー」
「ははっ、そうかそうか。
目、腐ってんじゃね?」
ひぇぇええぇ…!
いずみさん顔は笑ってるけど目が笑ってないです!!
怖い怖い!!!
晶に至っては普通に睨み付けてる!!
待って、私を間に挟んで睨み合うのやめてもらえませんか!?
「はいそこまでー。
ビックリした~?ツツジちゃん。
ごめんねー、いずみも晶も口悪いから。
いっつもこんなんだからあんまり気にしちゃダメだよ~」
「あ…はい…」
気にするも気にしないも、怖くて近寄れません。



